踵の音

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伊丹御用達医の大石が副院長をしている病院に大河が運ばれた。 大河は伊丹との賭けに勝ち、伊丹に飼われることになった。 腫れが引いていき、傷が癒えた姿を見て伊丹は驚いた。 「みにくいアヒルの子だったのか。そのツラなら男娼として十分金になるわな」 大河の容姿を見て伊丹は納得した。 「お前の事は調べさせてもらったぜ。良い大学出て、お堅い研究所に勤めたが、闇金での借金まみれがバレてクビになったんだな」 伊丹の言葉に大河は笑う。 「そう言うことになってますが、事実は違います。俺の研究内容を盗みたかったやつが、邪魔な俺を嵌めただけです。借金も俺の借金じゃない」 悔しそうに大河は言う。 「知ってるよ。お前のツラがマトモになる前に、全て片付けといた。お前を嵌めたやつは、今頃借金で押さえられてるな。お前が借りたことになってた闇金は、俺の兄貴の組だったから話が早かった」 やっぱり伊丹はヤクザかと大河は思ったが命の恩人でもある。 一度死んだ命を伊丹に飼われることでくれてやろうと思った。 伊丹にはそう思わせる魅力もあった。 伊丹が大河に当てた仕事は、ジュリの家庭教師と伊丹の秘書だった。 「俺は色々と外に出る機会が多い。ジュリの面倒を見てやってくれ。学校に行きたがらねぇのはしょうがねぇが、学が無いのは困るんでな」 「分かりました」 スーツを着こなした大河は返事をする。 「いきなり俺の秘書などと反感買うかも知れねぇが、そこはお前の頭を使って乗り切れ。あと、ジュリは俺の血縁では無い。赤の他人だ。そして戸籍上男だ。見た目は女の子だし、学校にも事情を話して女の子として通わせている。だが、ジュリに何かしたら、お前を()るよ」 伊丹の目はマジだった。 「大丈夫ですよ。ロリコンじゃありませんから」 大河の言葉に伊丹は笑った。
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