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やはり大河の生命力はかなり強かった。
ICUから出た大河は、面会に来たヒューの顔を見てホッとして微笑んだ。
「ヒューに勧めてもらった保険に入っておいて良かったよ」
そのセリフにヒューは笑うしかなかった。
「昼間に、伊丹とジュリが来たんだ。俺がICUに入っていた間に、話をしたそうだね」
穏やかな顔で大河は言う。
「ごめん。俺との関係、知られたくなかった?」
ヒューの言葉に大河は首を振る。
「良いんだ。俺はヒューを愛してる。何も隠す様なことじゃない。ジュリは気に入らなかった様だけど」
少し楽しそうに大河が言う。
「ジュリという子は、タイガのフィアンセだと言っていた」
ヒューがジッと大河を見つめる。
「日本にいる時に約束した。いつかジュリが大人になった時、その時俺がジュリを好きだったら結婚すると。ジュリに逆プロポーズをされていた」
思い出しながら語る大河の顔は、本当に柔らかい顔をしていた。ヒューはその大河の顔を見ながら大河の頬に触れた。
「痛い思いをさせてすまなかった。イタミにまで心配させてしまった。イタミに会って辛かったかい?」
大河は頬に触るヒューの手を軽く握った。
「いや。辛くない。久しぶりに会えて、懐かしかったし嬉しかった。ヒューにも会ってもらえて良かった」
大河は愛おしそうに、ヒューの手を自分の唇に付けキスをした。
「タイガ。退院したら、一緒に住もう。イタミと約束した。タイガと共に生きると」
ヒューの言葉に大河はただヒューを見つめる。
言葉が喉から出てこないほど、大河は嬉しくて震える。
「タイガ、答えは?」
「ありがとう。これからもよろしくお願いします」
大河がそう言って頭を下げるとヒューは笑った。
「タイガ。顔を上げて」
大河が顔を上げるとヒューは大河のおでこにキスをした。
「愛してる」
とびきりの笑顔でヒューは言う。
大河はおでこに手を当て微笑んだ。
「俺も愛してる」
ヒューは優しく大河を抱きしめた。大河はヒューに包まれながら幸せを噛み締めた。
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