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「話って何、勝川」
「うん、わざわざ呼び出して悪い」
「いいよ。最近つれないからさ、逆にうれしいよ」
学校からの帰り、俺は話があると近所のファミレスへと宮城を誘った。そうして二人が飲み物をとってくると、俺はようやく本題に入る。しかしその前に、俺は密かに深呼吸をした。
「あのな……、俺……、宮城のことが好きみたいなんだ」
「……、え?」
俺は宮城の顔を見ることなく、そう告白する。声だけしかわからないが、やはり相当驚いている様子だった。
「気持ち悪いのはわかってる。付き合ってくれとか、図々しいことは言わない。ただ、知っててほしかったというか……。黙ってるのがなんか、申し訳ないっていうか」
何を言っても言い訳にしか聞こえないだろう。しかし宮城がなにも喋らないのが怖くて、沈黙が怖くて俺は喋り続ける。
「それ、本当?」
「え?」
「本当に付き合わなくていいの?」
ちらりと目線を上げれば、なぜだか宮城のほうが耳を真っ赤に染めている。しかしその表情は、あのときと同じく拗ねたように唇を突き出していた。
「勝川は、それで満足なわけ?」
「え、いや……」
「僕は勝川のこと、気持ち悪いなんて思わないよ」
宮城が視線を動かせば、俺達はじっと見つめ合う。しかしそれは一瞬で、宮城は身を乗り出して俺の前に顔を寄せた。
「ほら、言葉にしないとわからないよ」
「いいのか?」
「とにかく、言ってみなよ」
それは悪魔の囁きに聞こえた。俺はゴクリとツバを飲み込む。こんな展開になるなんて思わかなったから、告白のセリフなんて考えてない。だからこそ、自分の気持ちに正直に話すしかないのかもしれない。
「宮城、お前のことが好きだ。付き合ってくれ」
「まぁ、最初はオトモダチからということで」
宮城はいたずらが成功した子供のように、ニヤリと笑ってみせる。その向こうに、黒い尻尾が見えたような気がした。
完
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