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現実の宮城はあんなにエロくない。至って普通の健全な男子大学生なはずだ。あんな色っぽい目をしたり、手をギュッと押し付けたりはしてない。断じて。
だがあのシーン、細部が全然違うが胸を触らせられたのは本当のことだった。
俺が初めて宮城に会ったのは、研究室の配属先が決まってその顔合わせのときだった。そしてその教員は酒飲みが多いらしく、そのまま歓迎会へと直行。そして二次会へと移動するためにみんなが移動している時のことだった。
俺は一次会で抜けるから、すっかり出来上がってしまった同級生の介護役を押し付けられたのだ。しかも最悪なことに、イビキをかいて起きる気配がまったくない。
面倒くせえなぁ、と思いながら座敷から引っ張り上げようとした矢先。俺の目の前に、宮城がいたんだ。そして俺に手を伸ばして一言。
「大丈夫? 手伝おうか?」
そう、本来の宮城はこういう優しい奴だ。まかり間違ってもあんな「色事に慣れてます」なんて雰囲気は一ミリもない。
「いいのか、二次会」
「うん、なんか大変そうだし。いっかなって」
「そうか……」
宮城は屈託なく笑うと、俺はそれを返せずに頷く。しかしあまり気にしてはいないようで、宮城は同級生の肩を担いで持ち上げようとした。しかしその細い腕では、引きずるのがやっと。
「無理するなって。俺がやるから」
「うん、ごめん」
「そんな女みたいな腕じゃ無理だって」
言った瞬間、しまった、と宮城の顔を見た。女みたいだと言われて傷ついてはいないだろうか。そんな不安があったが、宮城は拗ねたように唇を突き出していた。どうやら本気では怒ってないようで安心する。
「僕ってそんなに女っぽい?」
「いや、悪い。そういうわけじゃなくて」
手を目の前で振り、懸命に弁明をする。しかし宮城は拗ねた顔のまま詰め寄ると、俺の手をグッと掴んで自分の胸へと当てさせる。
「ほら、触ってみてよ」
「あ、あぁ……」
「筋肉だってあるでしょ」
一瞬のことだったし、パニックになっていてその感触は覚えていない。しかし宮城の、イタズラが成功したようなニヤリとした笑顔はよく覚えていた。
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