281人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
外で鳥の鳴く声がする。
どこぞの漫画のごとく、小鳥のさえずりで目を覚ました。ベッドの脇に置いてあるスマホを確認すると、時刻は6時50分前。
すこし遅いな。いつもならあいつが既に来ているころだけど…。
まだふわふわしている頭をギリギリ引っ張り上げ、連絡が来ていないか確かめる。がメールも着信も無かった。
おれはがんばった…。よくがんばったぞおれ……。さあ二度寝二度寝。
今度こそ欲に抗わずにもうひと眠りキメてしまおうと決意し、ズレた布団を頭までかぶりなおす。
あいつが来るまで、もう少しだけ。
完全に夢の中の住人と化す直前、こんこんとドアがノックされた。
「………はい」
力の抜けきった返事をすると静かに扉が開かれる。そして、俺の幼馴染である東堂庵がお味噌汁の匂いと共に入ってきた。
「遅れたが、そろそろ起きろ弓弦。学校の準備もあるし、なにより朝飯が冷める」
「うん…」
「…」
庵が声をかけてくれているのはわかるのだが、俺は空の返事をすることしかできない。
よくよく考えてみて欲しい。あたたかな日差しの差す部屋、小鳥のさえずり、ふわふわな脳みそ、味噌汁の匂い。
こんな好条件が揃っていて二度寝を中断できる人間が果たしているだろうか。いや、いない。
庵も静かになったので、きっと許してくれたに違いない。そう結論付け、日差しから逃げるように寝返りを打った。
突然、バサッと大きな音がしたと思ったら、やけに肌寒くなる。
沈む身体に鞭を打ってうっすら目を開くと、庵が困ったように笑いながら見つめていた。
「冷めるって言ったろ、朝飯」
どうやら強硬手段に出たようだ。
最初のコメントを投稿しよう!