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第1章 目覚め
身体に熱を感じる。
少しずつ全体からゆっくりと外側から内側へ行き渡るような感覚だ。
身体がちょっとだけ動かせるようになる。
そうして5分ぐらい経った頃、ようやく目を開けた。
うん?
違和感を感じる。
自分が入っていた棺が少しひしゃげ、そこから淡い光が見える。
これ潰れてね??
……落石かな?
軽く力を入れて、蓋を開ける。
ドシンと重い音が出て、そこから軽く砂埃が舞う。
古い遺跡のような場所で中央にいくつか文字の書かれた柱が4本あるが、欠落しており折れているものがある。その内の1本が入り口から見て奥の端にあった棺の上にのし掛かるように倒れていた。
入り口は瓦礫で埋まっている。
天井の小さな隙間から光が零れ落ちている。
「300年かぁ……よくここが完全に埋もれなかったなぁ…」
……久々だけど彼女からの声もないなぁ
まぁそのうち聞こえるだろう。
取り敢えずここから出るか…
瓦礫で埋もれている入り口へと歩みを進める。
ボコッと音を出して手が出てくる。
その後ゆっくりと身体が出てくる。
「ぶふぅ…僕はモグラじゃないぞ……」
普通は汚れるが、服どころか髪や手にも汚れがない。
周りに目を凝らす。
「随分変わったなぁ…」
眠る前は平地だったのに、今は森林地帯となっている。鳥のさえずりや草木がゆっくり揺れる様は穏やかな世界を写し出している。
「にしても凄いな…」
自分の身体、正確には服を見ながら言う。
見た目は紫色をした魔術師のような格好をしている。
……冬眠やアラーム起床機能、汚れの除去、破れ・風化防止機能が付いてる。300年前、勇者のパーティにいた魔術師が作ってくれた。棺は勇者のパーティの建築士(アーキテクト)に作って貰った。ちなみにシャレだ。何の機能もない。本人曰くヴァンパイヤっぽいだろと言ってた。
「……けどデザインが嫌いだなぁ」
僕はこの服の見た目と動きにくさが嫌いだ。動きやすくて目立たない色が好きだ。けど機能が良い…。
「……はぁ。とりあえず喉乾いた。」
水飲み場を探すか。動くのだるいし…
……うん、やっぱり何事も任せるのが一番だな。
「……冒涜な影(シャド・イアクトゥ)」
地面から3匹の狼、2羽の鷲が出てくる。影が形を成した姿をしている。
出てきた5匹は自分たちを出した男に群がる。
「よしよし。良い子だ。」
頭や体を撫でる。声は出ていないが、影たちは喜び、体を擦り寄せたり、舐めたりしている。
「水が飲めそうな場所を探してくれ。」
影たちは一斉に散る。
2、3分後に戻ってくる。
「ありがとね。では、動くの面倒だから乗せてってー」
影たちは無言で揉める。しばらくして、影の1匹である狼が来る。
「では、失礼して……よっと」
ぐたーっとした体勢で背中に乗る。そうして、男を乗っけた狼を先頭に走り始める。残りも追いかけていく。
5分後には小さな湖に着く。とても綺麗で辺りも風に揺れる草木の音、鳥の鳴き声以外聞こえず、静かだ。
「到着だね。ありがとう。」
そうしてゆっくりと降り、湖の近くに近づく。そうして、手で水を掬うようにして飲み始める。
満足し、水を飲むのをやめて、水面に映る自分を見る。見た目は20歳ぐらいで若い。黒髪だが、白髪が多く混じっており、割合的には同じである。目付きは悪いが、瞳の奥は激情は無く、穏やかである。
「相変わらず変わらないなぁ」
この世界に転生された時から何も変わらない。ある意味吸血鬼みたいだなぁ。
……………久々に見るか。
ステータス。
そう念じると目の前にウィンドウのようなものが出る。
犬堂 一(いぬどう はじめ) 624歳 人間
レベル24
HP 154(+10,584,736,922,072,091) STR 104(+10,369,555,740,053,224) DEF 79(+10,367,845,721,139,667) SPD 68(+10,357,124,007,211,815) MP 89(+10,326,730,095,571,154)
常時状態異常(解除不可)
「冥邪神の加護」
・不老不死
老化する事が無く、死ぬ事がない。
脳が劣化する事が無い。
・常時HPとMP回復
毎秒全体の100分の1回復。
・魔法弊害
新たに魔法を覚える事が出来ない。
・レベルアップの必要経験値異常上昇
レベルアップに必要な経験値が異常に上がる。その分レベルアップ時のステータスが異常上昇する。
・ステータスの異常上昇
レベルアップ時の全体のステータスが異常に上がる。
固有魔法
・冒涜な影(現在上限1,359,688,472,417,369体)
消費MP 1体につき5
・終焉しかない墓地(横の侵食 10秒で約30cm 上下は上限無し 対象選択可能)
消費MP 866,695,000,000
・冥邪神の召喚
現在のMP量では使用不可
消費MP ⁇
うん。相変わらずぶっ飛んだステータスで安心した。寝てる間に変わっていたらなぁという淡い希望は打ち砕かれたね。うん。
「……悲しみ」
次はこいつらだ。
まぁ、この感じなら変わらないんだろうけどなぁ。
ステータス。
冒涜な影(狼) レベル323
HP 8,072,021 STR 7,053,224 DEF 5,139,667 SPD 9,211,815 MP 152
冒涜な影(狼) レベル319
HP 7,989,577 STR 6,972,486 DEF 5,096,828 SPD 9,124,574 MP 139
冒涜な影(狼) レベル322
HP 8,010,091 STR 7,009,968 DEF 5,103,544 SPD 9,181,245 MP 146
冒涜な影(鷲) レベル299
HP 4,390,111 STR 5,953,604 DEF 3,917,070 SPD 10,535,466 MP 140
冒涜な影(鷲) レベル301
HP 4,738,409 STR 6,023,810 DEF 4,016,971 SPD 11,014,496 MP 142
うん。案の定だね。
はぁ…落ち込むわぁ。主人よりレベルが高いって……イジメかな?
レベルアップの楽しみがないのツライ……
「…あぁ……寝起きでこれは堪えるなぁ…」
まぁ、気持ち切り替えるか。
せっかくの再スタートだ。また前みたいに色んな新しいもんと出会える可能性が高い。種族、建築物、風景、魔法、技術、技……色々。またのんびりとした世界一周散歩をするのだから。
それにレベルが普通の生物と同じように上げられる魔法や道具に逢えるかもしれない。
「門出だねぇ」
やっぱり冒険は良いものだ。ワクワクする。
「人、または亜人の住む集落を探してくれない??」
即座に反応し、見えない速度でその場から消える。
「さて、この世界は何を見せてくれるのかな?」
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