私の鍵、頂点めがけて!

2/3
前へ
/3ページ
次へ
『ハァハァハァ』 (このフリースローを入れれば逆転だ! 絶対入れてみせるよ!) 麻琳(まりん)(県大会、シュート成功率80パー以上の真帆なら絶対大丈夫!) 彩希(さき)(頼むよ!真帆!) 郁美(いくみ)(真帆なら大丈夫!これで私達の勝ちも同然っ!) (りょう)(真帆!お願い入れてっ!) この時の私は勿論、他の4人も揺るぎない勝利を確信していたんだと思う・・・。 フリースローラインからフワッと放たれたボールがゴールリングに向かってゆっくり、ゆっくりと弧を描き近づいていく。 そう、まるでスローモーション映像でも見ているかのように。 〈ゴンッ!〉 (((((えっ!?))))) (はじ)かれて宙を舞うその物体は(あた)かも私達を嫌うみたいに逃げ惑い、助けを求めるかのように相手チームの手に渡った。 (ヤバい!) 勝利を確信していた私達はその一瞬の油断からリバウンドに失敗してしまったのだ。 残り1秒! 〈ブ━━━━!〉 ブザーと同時に相手選手が打ち放ったボールは何の抵抗も受けず、そのままゴールリングに誘われた。 〈バシュ!〉 ブザービーターだった・・・。 その場に呆然と立ち尽くす私達5人。 涙もない、言葉も出ない、呆気(あっけ)ない結末。 「82対84で共愛高校の勝利です!」 何も声も耳に入ってこない。 あの時、あの場面であんな油断さえしなければ今頃私達が・・・。 けど、自分に言い聞かせる。 勝負事に『たら・れば』は存在しないと! 試合が終わり、選手控室で突然涙が溢れ号泣した。私につられるかのように麻琳、彩希、郁美、綾も泣き始める。 お互いを慰め、寄り添い、そして慈しみながら涙が枯れるまで泣き続けた。 こうして私達の高校最後の夏が終わった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加