黒羽《あの子がいなくなった参加作品》

訪問の決まり

「おはよう」
「お～…」
「今日お願いね」
「あ、あれか」
「あれよ」
「やべ！時間っ」

毎日の会話にもはや色気すらない。
互いに求めるのは何か？
毎日毎朝必ず交わす自然な会話。
バタバタとあの人は外へ急ぎ、やるべき事に文句があるが胸にしまう。
そして気づく、あの人はあれを忘れていると。

なぜ？
お願いねって言ったのに……

胸にしまえない文句を一言呟き外へ急ぎ行く。
すると挨拶しなくてもいいあの子がいる。
連絡したわけでもなく、我先にと必ず決まった時にいる。

なぜ？
あなた、何を知ってるの？

電信柱の天辺に堂々たる姿で見下げるあの子。

生意気な…

しばし見えない火花散らしてあの人が忘れたあれを置く。
ふと見上げればあの子はいない。
そして置いたあれを見ると、あの子はいた。

また、睨んでる？

見つめ合ってるわけじゃないが、先に背を向けたのは私の方。
ゆっくり背をむけて、また見る。
それはあの子も同じだった。
互いに意識しているとわかるこの行動。
そしてまた先に背を向けて振り返ると、もうあの子はいなかった。

黒い羽をもつあの子。
また、数日後に出会い去っていくあの子。

……カラスめ。