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ROBO
ーーあれは確か昨年の秋だったと思う。
「もう男なんて信じない!」
ブランドもののハンドバッグに傷が付くのも構わず、私は部屋のフローリングに荷物をぶちまけた。
三年間付き合った男にフラれた。しかも二股で私の方が遊びだったらしい。相手の女はいかにも頭が悪そうなゆるふわ女。私よりも一歳若いというだけで余計に腹が立つ。
郊外の穴場の遊園地で遊んだことも、スイーツの美味しい店でデートしたことも、彼にとっては哀れな男に騙された女を眺める鑑賞会だったのだ。楽しい思い出だったはずなのに、あれもこれも私だけが一生懸命で舞い上がっていたなんて。
二十代前半の時間は有限なのに。折角ならば私の中で一番若くて綺麗な時間を大切な人と一緒に過ごしたかった。もう二度と取り戻せない肌のツヤに想いを馳せながらなんてことをしてくれたのだと言いたくて仕方がない。
「はぁ……!」
苛立ちと悲しみが入り混じった感情。汚い。憎い。恨めしい。色んな感情が湧き上がっては消えていく。男なんてもうこりごりだ。
誰かに縋りたい一心で手に取ったスマホには、メッセージアプリの通知が来ていた。
電車での移動中に愚痴を聞いてもらっていた弟からの返事らしい。私の失恋に至る経緯や今の心境など、つらつらと長文を書いて送ったのに、返ってきたのはただのひとこと。
“そんなに人間が嫌ならロボットはどう?”
「え?」
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