魔物の群れ

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耐えに耐えてきた職場を辞めた。 毎日先輩や上司の不条理な言葉の暴力、嫌がらせをなんとか我慢してきた。 紹介してくれた人の恩もあり、簡単には辞められなかった。 せめて三年間だけでも頑張れば、きっと認めてもらえる。 そう信じて歯を食いしばってきたが 遂に体の方が悲鳴を上げた。 ストレス性の胃炎と極度の鬱状態となり、毎朝起きられなくなった。 それでも無理に職場に行くと、ある日いきなり先輩に殴られた。 「お前の所為で、仕事が遅れるんだよ!」 遅れるのはその先輩がしょっちゅう煙草休憩をとって、帰ってこないからだ。 鼻血をぬぐい、その先輩の怒りに満ちた鬼のような形相(ぎょうそう)を見上げながら もう限界だと悟った。 この狭い職場では、世間一般の常識というものが通じないんだ。 そもそも、ここの場だけの日常で凝り固まった者に、 何を言ったって、聞く耳を持てる訳がない。 僕らの周りに出来た人垣は、目をそらし、 誰ひとり庇ってくれるものもいない。 三年間ちかく共に働いてきたの仲間なのに。 (わめ)き散らす先輩を残し、僕がまっすぐ出口に向かうと、 その大勢の人ごみが、モーゼの海のように分かれた。 そのままその日のうちに辞表を出して、 紹介してくれた人に謝罪と説明をして、僕は仕事を辞めた。
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