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第十一話
「は……? 今つけているって……」
シンシア様が信じられないと言う風に首を振る。信じられないのはこっちだよ。内心、そんなことを思いながら私は後ろを向き、つけているって髪飾りを見せる。
「これが証拠になると思いますが……それでもまだ信じられないでしょうか?」
私は少し流し目でクラスメイトの方を見る。クラスメイトは信じられない、と言うよりは驚きでいっぱいの表情をしていた。
まぁ、そりゃそうだよね。シンシア様の教科書破りの犯人は私だと思っていたのだから。
だけど、私にとって重要なのは、誰がシンシア様の教科書を破ったのかだ。……或いは、シンシア様本人が破ったのかもしれない。正直どちらでも良い。私はシンシア様と関わりたくないから。
「……嘘だ、嘘だ! そんなの信じられないわ! ロメリア様が破ったのよ!」
突然とシンシア様が叫び始める。かん高い声に思わず耳を塞ぎたくなる。
シンシア様に一体何が起こったのだろうか?
シンシア様の方を見ると、シンシア様の瞳が妖しく、暗く濁っているように感じるのは気のせいだろうか。前までのシンシア様の瞳は透き通った感じだったが、今は汚れ濁っている。
「危ないっ!」
瞬間、リオンが私を抱き抱えて横に飛ぶ。一瞬何が起きたのか分からなかった。
先程まで私がいた場所を見ると、そこには光の矢が突き刺さっていた。これも魔法なのだろうか。
どちらでも良いが、これはシンシア様がやったのだろうか。仮にシンシア様がやったとして、何故私に攻撃魔法を仕掛けたのだろうか。
シンシア様は何故私を好戦的な目で見るのだろうか。疑問しか浮かばない。私はただただ平穏に暮らしたいだけなのに。
「ロメ、大丈夫か?」
「……うん、ありがと」
不安が募る。リオンがいなかったら今頃私はあの光の矢に突き刺さっていただろう。顔が真っ青になっていくのが自分でも分かる。
本来なら怒るべきだろう。でも何故か怒る気力が湧かなかった。
もう嫌だ、全てに置いて嫌だ。なんて言っても意味無いけど。
「……なんでなの……リオン様はなんでヒロインであるわたくしでは無くて悪役令嬢のロメリア様を構うんですの!?」
「何故って……そりゃあロメのことが好きだからだし。そうでなくてもロメは俺の推しだからね」
……お、オシ? オシって何?
なんか時々リオンが何を言っているのか分からなくなる。本当にこの国の言語で話しているのか疑うわ……。
それにしても、シンシア様の行動が本当に理解不能だ。何故こんなことをするのか本当に訳が分からない。この先どうなるのかなんて、私には分からなかった。
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