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第三話
「今日習うのは下位回復魔法です。」
アルフォート先生はにこやかに笑いながら言う。でも回復魔法ってどんなのかしら? それに下位ということは中位や上位もあるのよね。
「魔法には下位、中位、上位と三種類あります。上に上がるにつれ、効果や威力は上がります。」
アルフォート先生はそこで一旦口を閉じた。一体何をするのだろう、そう思っていると先生は何か呟いた。
『ナティス』
すると、アルフォート先生の手から小さな光が沢山出てきた。
「皆様、今日習うのはこの『ナティス』です。これは温暖効果かあり、また対称の傷を塞ぎます。」
私は先生の言ったことを忘れないうちにメモをとる。
「それでは、皆様。二組になってやってみて下さい。」
私はリオンと二人一組になってやることになった。
「ねぇ、リオン。私からやってみても良い?」
「あぁ、勿論だ。」
私は体内の魔力を全身に行き渡るイメージをした。段々と体がポカポカしてくる。私は小さく息を吸って、呪文を唱えた。
『ナティス』
すると、私の手から小さな光が沢山出てきたかと思うと、全身に行き渡り最後には発光した。
「ふぇぇぇぇ!?」
私は思わず声を上げてしまった。そして、体がどんどん温かくなってきた。
いや、待って。温かいどころか暑くなってきたよ!?
『ディン』!!
後ろから声が聞こえた。かと思うと、私が出した魔法は打ち消された。
「お前なぁー!! 自分がどれだけの魔力持ちか分かってんのか! 全身に行き渡るように魔力を張り巡らすとあんなふうになるに決まってんだろ?」
リオンが鬼の形相で怒ってきた。
「ひゃいっ! ご、ごめんなさい!」
私が必死に謝ると、リオンはふぅと溜め息を突いた。そして、何を思ったか私を抱き上げる。ってえぇぇ!?
「アルフォート先生、授業を台無しにしてしまい申し訳ありません。魔力酔いを起こす可能性があるので彼女を保健室に連れて行きます。」
リオンは言うだけ言うと、さっさと教室を出た。無論、私を抱き上げたまま。
……これは何かの罰ゲームですか。
◇◇◇◇◇
私達は保健室に来ていた。そこまでは良かった。だけど…………何故貴女がいるの? ヒロイン、シンシア・ロレンツィア。
「なっ何故貴女がここにいるのですか!? ロメリア様っ!」
「何故って……」
いや、何故と言われても………。
「しかも、攻略対象であるリオン様もいるのですか! リオン様を扱き使わせて……!」
あー、それ一番言ってはいけないやつだよ。
「は? お前こそなんなの。俺が好きにやってるだけなのに全てロメのせいにして。と言うか攻略対称って何? 人を物扱いすんなよ。」
あー……口調が崩れていますよ? リオンさん。でも普段怒ることの無いリオンがここまで怒るのは珍しい。よっぽどシンシア様に怒っているということ?
「なっリオン様には関係ありません!」
空気の読めないシンシア様がまた何か言ってきた。
隣でブッチーン、と音が聞こえたような気がしたのは気のせいだろうか。何を言っても話を聞かないシンシア様に私は頭を抱えるしかなかった。
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