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第六話
「えっ、ロメ? ロメ、ロメ!?」
暫くすると、ロメは動かなくなった。俺は焦ってロメに声を掛ける。俺は思わず息を詰める。
スースー………
よく見てみると、ロメは寝ているだけだった。俺はハァー、と溜め息を突く。
「何だよ……焦らせるなよ………」
まぁ、でも無理は無い。授業で魔力を使いすぎて、ただでさえ疲弊しているというのに。それ+シンシア・ロレンツィア事件。何なんだ、アイツ。俺のロメに。
ロメ、大好きなロメ。何で君は悪役令嬢なんだ。なんて、シェイクスピアのロミオとジュリエット風に言ってみたが、何にも変わらないな。
ロメ、俺一目惚れだったんだ。初めて君と話したのは今から七年前、俺達が五歳の時だった。
◇◇◇◇◇
俺は父上に連れられて、伯爵家へと来ていた。だが、俺の機嫌は底辺を突き破って、最悪だった。
何でこんなところに来なければならないのだ。マジで面倒だ。と言うかそもそも死んだかと思うとこんな訳の分からない世界に転生させられて本当に嫌だ。
俺の前世は日本人だった。前世の俺の名前は世羅貴斗。髪を金髪に染めていた。そしてよく仲間と学校をサボり、煙草や酒をやっていた。
まぁ、所謂(いわゆる)不良ってやつだ。
そんなある日、俺は俺に恨みを持ったヤツに刺されて殺された。まぁ、因果応報ってやつだな。
そして、気が付いたら此処にいたってわけ。それで、何で男の俺が乙女ゲームにやたら詳しいかと言うと…………あまり大きな声で言いたくないが。この乙女ゲームをプレイしていたんだ。
ごほん。それは兎も角。
実は俺には乙女ゲームの中に推しがいるんだ。その推しの名は『ロメリア・アクノマリア』。
だから、だから、まさかロメが俺の幼馴染になるなんて夢にも思わなかった。だから嬉しかったんだ。ロメに話しかけられて。
『ねぇ、あなただぁれ?』
舌足らずな感じで言う可愛らしい少女。その時、まさか彼女があの『ロメリア・アクノマリア』だと思わなかった。俺はそんな過ちに気付かず、だがしかし、公爵令息らしく挨拶をした。
『……挨拶が遅れて申し訳ございません。俺の名はリオン・ラミントンと申し上げます。以後お見知りおきを。』
俺はにっこりと笑ってロメの手の甲にキスを落とす。すると、彼女はにっこりと笑って言うのだった。
『私の名前はロメリア・アクノマリアです。よろしくお願い致します。』
ハッキリと、けれどまだどこか舌足らずな感じで言う彼女はとても可愛かった。だがしかし、ロメリア……。あのロメリアだと。
先程の憂鬱な気分が一気に吹き飛んだ。この時の俺のこの感情はきっと、『恋』というものだろう。
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