2人が本棚に入れています
本棚に追加
あの子が消えた理由 4
家に帰った貴彦は、ベッドの上にごろりと横になった。
「想像上の友達か……そんなこともあるんだなあ」
そこで、何かが引っかかった。
(なつみさんが考え出した友達……なつみさんの想像力が作り出したなら、なんでそのミヤさんは、なつみさんが知らなかった人面犬のことを知っていたんだろう? なつみさんが知らないことは知らないのは当然じゃないか?)
急に冷たい視線を感じた。部屋の隅に、なにか黒い霧のようなものが漂っていた。
「あなたのせいよ。私がなつみと遊べなくなったのは」
木枯らしのような冷たい声。
「多分今、出て行ってもなつみは私をジャマにするわ。だって、今なつみはあなたのことが一番気に入ってるんだもの」
その霧は人の形になる。おかっぱ頭の少女。なつみが描いていた女の子。でも、絵のようにTシャツと短パンを着ていない。代わりに、真っ白な着物を着ていた。
「あなたがミヤ……」
なつみは、ミヤがだんだんと出てこなくなたと言っていた。
貴彦と出会ったばかりのとき、なつみはミヤの事を内緒にしていたらしい。きっと、貴彦といるときミヤが話しかけていても無視していたのだろう。それがつらくて、ミヤは姿を消していたのだ。
「ずっと一緒にいるって約束したのに、なつみもひどいわ。でも、また仲良くなれると思うの」
にっこり笑って、ミヤが両手を差し伸べた。
朝早く、なつみの家に電話がかかってきた。たまたま家電のそばにいたなつみは受話器を取った。
「ああ、もしもし? なつみちゃん?」
相手は貴彦の母親だった。
「貴彦がそっちに行ってない? 朝起きたら、ベッドが空(から)なの。どこにもいないの」
大分焦っているようで、少し早口になっていた。
「いえ、こっちには来てませんが。どうし」
その質問を言い終わる前に、電話が切られた。
これからクラス全員、知り合い全員に電話をかけるつもりなのだろう。
「どうしたんだろう…… 貴彦いなくなったって……」
思わずなつみは呟いた。
「大丈夫よ」
「ミヤ!」
いつの間にかミヤがそばにいた。
「ミヤ、一体今までどこにいたの? 貴彦がいなくなったの。いなくなった理由はなんなんだろう」
ミヤは、落ち着かせるようになつみの肩に両手を置いた。
「大丈夫よ。彼がいなくなったって、私が一緒にいてあげるから」
にっこりとミヤはほほ笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!