忘れることを学ぶ

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「ああそう、私の手帳返してちょうだい」 「いいっすよ、はい、これ」 俺は先輩に手帳を返した。先輩は手帳を開け、俺が書いたところに目を通した。 「プッ…なに…これ…」 「さっきのひまわりを模写したっす」 「ダンゴムシの出来損ないみたいなやつが、ひまわりなのね…ヒドイ、大人が描いたとは思えない…」 「だから言ったじゃ…」 「『仏壇』『老婆』『深い青』『ひまわり』『女の子』『謝礼!』なに、このビックリマーク…肇ちゃん、あなたほんとうにセンスが独特よね」 「俺は謝礼とか用意してなかったんで…」 「大丈夫かなあ。私のノート日本語で書いてあるから、理解できるかしら?フフフ」 「日本語は大丈夫っす。オランダ語は無理っす」 先輩はまた眉毛を上下させて、俺に何かしらのメッセージを伝えた。キャラメルマキアートを飲んだ後でさえ、彼女の眉毛の暗号が解けず、おれは何か負けないようにメッセージを送ろうと、両手を組み合わせてカニを作った。俺が先輩の目の前で手をヒラヒラ動かしていると、先輩は腹を抱えて笑った。 「バーカ」
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