69人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
取り敢えず話の流れで、スマートヴィジョンというキーワードについて聞き返したジュリア。そのジュリアの反応に気を良くしたのか、ギュンの語りにゼスチャーが加わる。
「だって君、大勢の『知ってるよ』を見ただろ?」
知ってるよを見た? なんか文法がおかしくない?? ……沈黙するジュリア。
「あれは君のスマートヴィジョンだよ!」
ギュンの下の方から、謎の黒い物体が言う。
「嘘を付くな! 全くお前って奴は」
ギュンが少し怒りながら、股間の謎の物体を握る。するとその物体は、拗ねたように口を尖らせグッと反り返り、少し大きくなった。
さっきから、何をしているのこの人……。股間の物体と謎のやり取りを繰り広げるギュンをジト目で見ているジュリア。
「少し歩こうか。ターミナルステーションに続くセンター街まで行けば、カフェがある。そこで、話をしよう」
そう言いながら、股間の物体を握り締めたギュンはターミナルステーションの方に歩き始めた。
……そのままの状態で行くの? なんか見た目的に、すごくNGなんじゃないかしら……。そう思いながらも、後を追うジュリア。
けっして謎の死体の家の調査のことを、忘れているわけではない。基本的に人間の思考というものは、マルチタスクが出来る仕様にはなっていないからだ。
最初のコメントを投稿しよう!