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股間の物体を見続けるジュリア。微妙にどや顔になるギュン。
「随分と興味を持ったようだね。さわってみるかい?」
そう言ったギュンの息遣いが、何故か少し荒くなったのが気になったが、ジュリアは素直にその物体に手を伸ばす。
ジュリアの手が触れると、そいつは嬉しそうに頭を上げて伸びをした。
……生き物? ……感情があるの? ジュリアは小動物でも扱うかのように、その頭らしき部分をなでてあげた。
「そのまま優しく握って、ゆっくりと動かしてごらん! そうすれば、サプライズがあるよ!」
その物体がジュリアに言う。
「また嘘を!! ジュリア、その辺でやめた方がいい」
ジュリアは、なんとなくその物体の感触が好きになれなかったので、手を離した。
メインストリートとなるセンター街を歩くジュリアとギュン。人々がこちらを見つつ、ひそひそと話しながら、遠巻きに通り過ぎて行く。
……あ……。自分が何か物凄いことをしていたんじゃないかと、我に返ったジュリア。思わず周りを見回し、知り合いがいないことを確認する。
「だいじょうぶ、普通の人にスマートヴィジョンは見えないからね」
そう言ってギュンは、ジュリアに微笑みかけた。
……何が、だいじょうぶなのか……。そもそも、そういう問題じゃない気もする。
ギュンは、そのまま人の視線を避けるようにメインストリートから離れた裏路地へと入っていく。そしてその先にある、こじゃれた雰囲気のカフェへ向かっていった。
そのカフェは、ジュリアが前から一度行ってみたいと思っていたカフェだった。店に近付くにつれて、なんだかうきうきとしてきたジュリア。
その前に、何故自分は突然出会った謎の男とカフェに行かなきゃならないのか……。
ジュリアは疑問に思ったが、そのカフェに行ってみたいし、この後何か用事がある訳でもない。取り敢えず、このまま流されてみることにした。
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