第1話 その少女の名はジュリア

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 ジュリアは幼い頃から、興味本位で手当たり次第に思いついたことをやり散らかす、というような子供であった。  そんな彼女も高校に入るや否や、父の大学に進み研究を手伝いたいと申し出たが、全く相手にされなかった。  しかし、その程度でめげる彼女ではない。日課のごとく、自宅の父の書斎に侵入するジュリア。極秘資料と書かれた書類を躊躇なく手に取り、熟読する。そして、その極秘資料の中の『川に浮遊していた謎の死体』というフレーズが目にとまり、ゲラゲラと笑っていたところを帰ってきた父に見つかって、こっぴどく叱られた。  その翌朝、謎の死体の身元を調査すると宣言して、家を飛び出したジュリア。  極秘資料に記載のあった住所は、ジュリアの住む駅にほど近い主要都市であることを確認し、このマチダ・ターミナルステーションに降り立った。  スマートデバイスで位置情報を確認しながら、ステーションから少し離れた住宅街へと向かって行く。そして、住所の通りナビが指し示す一軒家の前で立ち止まった。  おそらくここが、ジュリアの訪問先。謎の死体の家だ。ジュリアは、あたりを見回しつつ住所を確認する。そして、その家の表札に目をやる。表札には『井沢』とある。  ジュリアは思う。井沢さんか……、と。  別に井沢という名に何か心当たりがあった訳ではない。ただ思っただけだ。
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