第2話 知ってるよ

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第2話 知ってるよ

 父の研究の手伝いを買って出て、謎の死体の家である井沢家を訪問したジュリア。玄関の扉を開けると中庭という、斬新な家の構造に驚いたのもつかの間。その中庭に転がる無数の井沢の頭に遭遇した。  どうして井沢の頭と分かったかというと、そこが井沢さんの家だったからだ。  その頭は、どれもじっと目をつぶって動かないままだが、一つ一つがまるで生きているかのようにリアルである。しかも、どれも同じ顔に見える。  ジュリアの顔には動揺の色が隠せなかった。しかし、ジュリアは調査に来たのだ。勇気を振り絞って、一歩を踏み出す。そして取り敢えず、一番手前にある井沢の頭の一つをつま先で蹴ってみる。  するとどうだろう。それまでじっとしていた無数の井沢が、一斉に目を見開いた。そして口々に呟き始めた。  「知ってるよ」「知ってる……よ」「知ってるよ」  その声は、ざわざわと波のように部屋いっぱいに広がり、ジュリアの鼓膜を刺激する。  「知っ……てるよ」「知って……るよ」「知ってるよ……」  声の数も次第に増えていく。しかも、同じ言葉ばかり。くど過ぎる。  何かに洗脳されたかのような錯覚を覚え、耳を塞いで頭を振るジュリア。強迫観念に駆られ、これまで隠していた数々の秘密が頭を過る……。
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