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ジュリアの頭を圧迫する謎の強迫観念……。理性に反して、思わず口が動いてしまう……。
「な、何よ? 私の何を知っているというのよ!? 電車の中吊りにあったリューイチのポスターを引き抜いて持って帰ったこと!?」
理性とのせめぎ合いの中で、叫び出すジュリア。それでも、波のように迫る声は鳴り止まない。
「分かった。言う! 言うわよ! 言えばいいんでしょ!? ……あの……100均アイテムで、ちょっと変なことを試してみようと思ったことよね!?」
更に叫んだジュリア。しかし、状況は変わらない。それどころか耳から聞こえていたはずの声は、いつのまにか頭の中で鳴り響いている。
「知ってるよ……」「知ってるよ」「……知ってるよ」
「うわあああ! 何? 何なのよ!? まさか、あのこと……。嘘でしょ? 何で知ってるのよ??」
ジュリアの声がさらに大きくなる。このままだと、とんでもなく恥ずかしい秘密を口走ってしまいそうだ。
「ち、違う!! クローゼットの中にあるアレは……!!」
半狂乱で悶え苦しんでいると、突然何者かがジュリアを家の外へ引っ張り飛ばし、ピシャリと玄関の扉を閉めた。
勢い良く飛ばされ、生垣に体半分突っ込んだジュリア。
振り向くとそこには、閉じた玄関の扉を背に男が立っていた。
「危なかったな。あのまま居たら……」
男は何処か遠い目をしながら、呟く。
あのまま居たら何? なぜそこで、言葉を切るの!?
ジュリアは、もどかしかった。
「……君、ジュリアだろ? 俺はギュン」
ギュンと名乗る謎の男。少し前屈みなのが気になった。
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