第5話 スマートヴィジョン

1/2
69人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ

第5話 スマートヴィジョン

 ギュンの後を追うジュリア。マチダ・ターミナルステーションに続くセンター街に向かって行く。  センター街は、ほぼ歩行者専用の大通りになっている。センター街に入り、よそよそしいながらも、ギュンの隣を歩くジュリア。ギュンは、道すがら股間の物体と会話を繰り広げている。  スマートヴィジョンと説明を受けたその物体……。  小さいながらもそれには手があり、体と思われる部分も反ったり曲がったりと微妙に動く。しかも、人の顔のような物が付いていて、しゃべりもする。はじめはギュンが一人で喋っているのかと思っていたが、どう見てもその物体が喋っているとしか思えない。  ジュリアは、見てはいけないものなのではないかと、存在自体を疑ったが、明らかに存在している。確かにそこに存在しているのだが、にわかに信じがたい。  しかも、なんだって、そんなところにくっついているのか。場所も形もアレだけに、アレとしか思えない。でも、アレを詳しく知っているわけじゃないから、アレかどうかって、一体ナニが、どうアレなのか……。混乱しつつも、ガン見してしまうジュリア。 「何なのそれ?」 「スマートヴィジョンさ!」  ジュリアの質問に当然の如く答えたのは、股間の物体。  だから、いったい何なんだ!? と聞いている!! 会話にもどかしさを感じるジュリアであったが、グッと堪える。  小さい頃から「すぐに人に聞くな」と父に言われ続けてきたジュリアであったが、「その場で聞かないと、何を疑問に思ったか忘れてしまう」と毎回父に言い返してきた。しかし、成長するにつれて父のその言葉は「聞きたい事を厳選しろ」という意味なんじゃないかと思うようになってきた。しかし、厳選している間に忘れてしまうから、やっぱり思いついたら全部聞く。  そもそも、ギュンという男。こいつも何気に謎だ。しかしジュリアは、どうしてもその股間の物体の方が、圧倒的に気になった。 「それは、そこに存在しているの?」  ジュリアは、さっきからギュンの股間の物体を見っぱなしだ。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!