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第3話 ギュン
謎の死体の家を訪問したジュリア。無数の井沢の頭に何かを知っていると言われ、混乱していたところを男に救われた。
救ってくれた男の名はギュン。
ギュンと名乗る男が、今ジュリアの前に立っている。しかも、何故か少し前屈みで。
ギュンは、前屈みのままズボンのポケットに手を入れると、何かをごそごそし始めた。そして、恍惚とした表情をジュリアに向ける。
なんか、ちょっとヤバい奴かも……。
ジュリアは直感的に思う。
そんなジュリアに男は語る。
「危ないところだったな」
危なかったの?
正直、ジュリアにはまだ実感がわかない。しかし、取り敢えずお礼くらいは言っておこうと思った。
「ありがとう。ギュン……だっけ? あなたの名前」
「いやいや、いいんだ。それに僕のことは、呼び捨てで構わない。ギュン! と呼んでくれ」
なんなの? もとから呼び捨てたつもりだけど。もしかして、発音? 発音にこだわっているの!? しかも、今後ヨロシク的な……。ない、ない。今後とか、ないから……。応対に困り、戸惑うジュリア。
「ところで。聞いてもいいかい……」
そう言いながら、言葉を止めるギュン。前屈みのままジュリアを見据える。
……な……何よ。……この溜め……。
微妙な空気に警戒するジュリア。いったい何を聞かれるのか……。
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