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そうして辺りが暗くなり、気がついたら朝になっていた。でも、二番目の兄もかあさんも帰っては来なかった。
僕はかあさんの言い付けを守って、段ボールの箱の中から離れなかった。探しに行きたいのを我慢してじっと待った。お腹がくっつきそうな程にへこんで、ぐぅっと鳴った。
そんな時、遠くで人間の声が聞こえた。その声は次第に近づいて来た。お腹がペコペコだった僕は、気が付くと倉庫と壁の隙間を通って、表の道に出ていた。
声の主は人間の子供たちだった。後はさっき話した通り。誰も僕に食べ物をくれなかったんだ。
でもね、奇跡が起きたんだ。しばらくして一人の女の子が僕の元に走って来たんだ。その子は僕の目の前にしゃがみこむと、何か美味しそうな匂いがするものを僕の口元に近づけた。僕は匂いでそれがパンだと解ると、夢中になってかぶりついた。
僕のペコペコになっていたお腹は、満たされた。その子は僕が全部食べたのを見届けると、僕の頭を何度も擦って帰って行った。
翌日も子供たちの声が聞こえて来ると、僕は表の道に出た。前の日と同じように子供たちが集まって来て、僕を撫で回した。僕は子供たちの中に、昨日僕にパンをくれた女の子がいると思い、見回した。
そうしたら、いたんだ。その子はみんなと少し放れて僕を見ていた。僕はその子の側に行きたくてうずうずしていたけど、誰かが食べ物をくれるかもしれないから我慢した。
そして何も貰えないままみんな帰って行った。僕は慌ててあの子を探した。さっきまでいたあの子が、いなくなった。
僕は地面に鼻を付けてあの子の匂いを探した。その匂いを辿っていけば、あの子に会えるかも知れない。そう思った。
でも、そうはしなかった。僕はここにいてかあさんやかあさんを探しに行った二番目の兄が帰ってくるのを待っていなければ。でも、お腹が空いて今にもくっつきそうだった。
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