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今だ。僕は全力で四本の足を動かしあっと言う間に表の道に飛び出した。
あれ、いない。昨日は一人だけみんなと離れた所にいたから、ちょうどいいタイミングだと思っていたのに。振り向いて子供たちの集団を見た。後ろからだとどれがあの子かわからない。
でも、みんなと離れて一人でいる子はいないみたいだった。
しまった、見失った。どうしよう。
「どうしたの」
そう言いながら、昨日僕に話しかけてきた猫のお姉さんが歩いて来た。
「女の子を見失ったんだ。どうしよう。後ろ姿ではわからないよ」
「じゃあ一か八か、誰かの後ろにくっついて行ったら」
「あの子がいいんだよ。あの子じゃなきゃ駄目なんだよ。どうしよう、僕どうしよう」
「二択ね、行くか残るか。いや、最後尾の女の子は四人いるんだから、残るのと合わせると五択になるわね。
さあ、早く決めないと。姿が見えなくなるわよ。五択が一択になっちゃうわよ」
「どうしよう。僕、どうしよう」
「考えている暇は無いわよ。取り敢えず四択を追いかけるのか、残ってあの子を待ちわびるのか。レッツ、シンキングタイム。て、言ってる場合じゃないわね。あーあ、行っちゃった」
女の子たちは見えなくなった。僕はまた、取り残された。僕の優柔不断さが僕の運命を悪い方向に向かわせているのだろうか。兄たちのように後先考えずに行動した方が、かえっていい結果を生むことだってあるんだろうか。
僕がそんな事を考えていたら、あの匂いが近づいて来た。
あの子だ。この間食べた、パンの匂いだ。
「あの子だ。あの子のくれたパンの匂いだ。こっちに向かって来る。あの子が僕にパンを持って来てくれたんだ」
「本当ね。いい匂いだわ。良かったじゃない。待っていた甲斐があって。どうやら私の読みは見事に外れちゃったみたいね。
でもね、問題はこの後よね」
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