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絵本
むかーし、むかし。
あるところに。
動物さんたちが仲良く住んでいました。
その動物さんたちは
コトリさん
ブタさん
キツネさん
ウサギさん
4匹はいつも一緒に楽しく遊んでいました。
ある日、いつものように4匹で遊んでいると、木の陰から1匹のワニさんが近づいて来ました。
「僕も仲間に入れてよ。」
寂しげにポツリと言います。
4匹は慌てて逃げ出す。
相手は獰猛な肉食。本能が逃げろと叫ぶ以上、どうしようもなかった。
後日からワニさんは必死に友達になろうと頑張りました。
ですが、いつも逃げられてしまいます。
一人淋しく落ち込んでいる姿を見た4匹はバレないよう小声で言い合います。
「どうする?」「無理だよ。食べられちゃうよ。」「でも、可哀想だよ。」「そう言うなら君が行って友達になりなよ。」「ヤダよ。君が行ってよ。」「言い出したのは君だろ?」
可哀想だと思い、色々話し合うが、結局は誰もワニさんに話しかけるどころか近付くことすらありませんでした。
いつものように一人で反省していると、一人のオオカミさんがやってくる。
「君が噂になっているワニ君だね。」
驚いたワニさんは振り返る。
「何で知ってるの⁇」
「ここいらじゃ、君は有名人だよ。肉食が食べるべき動物を友達として欲しがるなんてあり得ない事だからね。」
「……どうしたら、彼らと友達になれるかな?」
「さぁ⁇そんな感情を抱いた事がないから分からないなぁ…
とにかく話しかけるしか無いんじゃない?」
そう言うとオオカミさんはその場を去っていきました。
その言葉を聞いたワニさんはその後も何度も話しかけにいきますが、結果は同じ。いつものように一斉に逃げられてしまいます。
それが日に日に続き、ワニさんは夜も眠れない程、精神的に参ってしまいます。
そうして、彼らと会うことを止め、森の奥の沼地に引きこもるようになりました。
ある日、沼地であの時のオオカミさんに出会います。
「やぁ、久しぶりだね。…その様子だとダメだったみたいだね。」
虚ろな目でワニさんはポツリと呟く。
「……どうしたら良かったんだろ…?正解が分からないよ……」
オオカミさんは少し考えた後、ニヤリと笑いながら話す。
「…良い方法があるよ。友達から聞いたんだけどね…。試してみるかい⁇」
その言葉を聞いたワニさんの目に小さな光が見えました。
「うん!試してみたい!教えてくれるかい⁇」
「…良いよ。それはねーーーーーー」
後日、口元を赤く染め、大声で笑いながら踊っているワニさんがいました。
そこへオオカミさんが来ます。
「……その様子だと上手くいったみたいだね。良かったよ。」
オオカミさんは笑顔で話しかけます。
「うん!君のおかげだよ!本当にありがとう!」
ワニさんは嬉しくて、その場でクルクル回ります。
「それにしても、そんな簡単な事だったなんて気付かなかったよ。凄く驚いたよ。」
「気付けるかが鍵だからね。……相手を食べて自分の物にする。自分が彼らであり、彼らが自分ってこと。それに君の場合は彼らになれるでしょ?ずっと見てきたんだから。」
「……そうだね。自分の物にするのがこんなにも気持ちが良いなんて、知らなかったよ。これで僕たちはずっと一緒さ。
…………君もね。」
ワニさんはオオカミさんに近付き、肩を強めに掴みます。
「!? ちょっと待て!!!やめっ………!?」
しばらく争った音がした後、静かになりました。
「………もっともっと友達を増やさなきゃ。…ふふっ。楽しいなぁ。」
そうして新たな友達をどんどん増やしながら、ワニさんは幸せに暮らしました。
めでたしめでたし。
「………どう??我ながらよく出来たと思うんだけど?」
「んん〜!!ん〜〜!!!」
「ん〜〜〜!!!」
小屋には3人いる。その内2人の男女が両手足共に椅子にガムテープで拘束されており、叫べないよう口も塞がれている。男の前にもう1人の女が手にトンカチと釘を持ち、薄ら笑いを浮かべている。
「ごめんなさい。喋れなかったわね。…まぁ、話せたとしても大した感想一つも言えないでしょうね。仮にも担当者のくせに。
…この女が私の代わりとはね。酷い話。まさかゴーストライターをさせられていたなんてね。夢を踏みにじるだけで飽き足らず、必要経費だと言って金を取る。……何より一番許せないのはあんたの存在全てだ!まさかパパとママを奪った3年前の事故……あれを引き起こしたあいつの身内とはね!!」
そう言って男の指に釘をトンカチで打ち込む。深々と手すりごと突き抜ける。
「んんんんん〜〜〜!!!!!」
男は痛がり、涙を流す。
「ん〜!!!」
女はそれを見て、懇願するような声を上げる。
「うるさい。」
トンカチで女の頭を3回殴る。
頭から血が噴き出し、女は数秒痙攣した後、動きが止まる。
「……やっぱ前菜ね。ほんのちょっとだけ気分が晴れた。……次はメインディッシュ。簡単には終われるとは思わないことね。」
「………」
絶望に満ちた顔をする。
男は願う。どうか夢であって欲しいと。過去に戻れるのであれば、この女には近付かない。
だが、これは現実。無情にも時間はゆっくりと流れる。身体に走る痛みと共に。
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