週末のスーパーライダー

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「今日はありがとおね。楽しかった。」 ヘルメットを二つ、手にぶら下げて棗が笑った。俺は無意味にバイクの座席を叩く。もうすっかり冷え切っていて、手のひらから温度が吸い取られてゆくのがわかった。 俺たちの週末はこれでおしまいだ。明日の俺も、明日の棗も、それぞれ仕事に追われる予定が入っている。だけど、時は過ぎるし、曜日も変わる。季節は巡り、人は老いる。俺だってそうだ。当然彼も。 「暇ができたら、またきますね。」 「うん。」 待ってる、とは言わない。それでいい。心待ちにする必要はない。俺たちはお互いに、孤独を抱く必要があったからだ。 「次は、秋の海がいいな。」 もう暗い中で、彼の笑顔は夕暮れの色を強く残していた。しかしそれは、決して美しくはない、少し黄ばんだ、灰色だった。
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