カンバス

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 今からずっと昔、セカイはまっさらだった。    昔々、セカイには色が「白」一色しかなかった。  見渡す限り、真っ白な世界。  ここに住むモノもまた真っ白であり、これらには境界がなかった。  一日目、セカイには「黒」い「線」が引かれた。  細くて弱々しい線、太く荒々しい線、様々な線によって、セカイには境界が生まれた。  あっという間に、ここに住むモノは「者」と「物」に分けられ、カタチが創造された。  二日目、セカイには「赤」と「青」と「黄」からなる、色がつけられた。  色は「白」や「黒」と混ぜられ、さらに繊細な新しいイロが生まれた。  イロはどんどんセカイに重ねられ、とうとうセカイから純粋な「白」という色は消えてしまった。    三日目、セカイには再び混じり気のない「白」が現れた。  「白」はセカイの明るさに欠かせない存在であったため、セカイの創造主に重宝された。  「白」はみるみる使われていった。  四日目、セカイの創造主は嘆いた。  「白」がなくなった。  「白」はあまりにも使われ過ぎたのだ。  セカイの創造主は「白」を求めて旅に出た。  五日目、セカイは大きく揺れ動いた。  セカイは今まであった場所とは別のところへと移された。  そして、見た目だけはそっくりそのままの、もう一つのセカイが大量にコピーされた。  六日目、セカイは世界中に広がった。  あるセカイは子供に買われ、またあるセカイは老人に買われていった。  そして本物のセカイは、創造主によって大切に大切に保管された。  今日、セカイは色褪せてきた。  セカイは枠から外されて、枠にはまた真っ白なまったく別のセカイがはめられた。
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