名前

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 私は物語の登場人物に特に名前をつけないことが多い。 だが、それは決して名前を付けるのが面倒臭いからではない。 名前をつけないことによって抽象化したいのだ。 例えば、主人公に「太郎」と名前をつけたとする。 その瞬間、その物語は私のものでも、あなたのものでも、彼や彼女のものでもなくなり、その「太郎」という人物のものになる。 それを避けたい。  私は物語に枠をつけたくない。 その物語は誰のものでもあって、誰のものでもないものであってほしい。 読んでいる人はその物語を客観的に読むことも、入り込んで読むこともできるような、そんな物語の可能性に触れたい、という壮大な妄想に耽っている。
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