夕暮れ時

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夕暮れ時

 私は夕方という時間帯が好きだ。 夕日はもちろんだが、それよりもビルの窓に映った夕焼けの色が好きだ。 青というべきか、紫というべきか、橙というべきか、なんとも言い表し難いあの色がたまらなく好きだ。 しばしば自然がどうのと植えられる街路樹や屋上庭園よりも、ビルに映るあの色が私にとってはよっぽど自然と呼ばれるに相応しいと思われる。  都会において、植物はヒトに利用される。 植物は植えられるがまま、人間の意図した形に沿って育てられる。 もちろんビルも人間に建てられた物だ。 しかしどのビルが夕日の入射角度まで計算して建てられるだろうか。 よほどデザインに凝ったビルでない限り、そうはいかないだろう。 それに地球の自転を誰が止められるというのか。  だから私は夕方という時間が好きだ。 人工物とそれが人間に意図されない自然とがともにあることを特に感じられる時間であると私は強く思うからだ。 
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