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雨
私は雨が好きだ。
雨の降る様子、雨音、雨が肌に当たる感触、雨の匂い、雨の味…五感を用いたそれらすべてが好きだ。
雨の降る様子、少しぼやけた視界に映る景色。
それはまるで眼鏡を外した瞬間の視界のようで、物の大体の形のみが見られる。
普段は細かいところにばかり目が行きがちな私に、新たな視点を与えてくれる。
そんな感覚が好きだ。
雨音、音楽に匹敵するほどの繊細な音。
一定のリズムを刻んでいるようで、そうではない。
屋根に当たった雨粒がそのまま地面に当たる音も、それらが集まって地面に当たる音も、また、直接地面や屋根に当たる音も、すべてが一緒になって奏でられるメロディーのようなものだ。
私にとって最高の作業用BGMである。
雨が肌に当たる感触、少しくすぐったい感覚。
それはシャワーよりも優しく、風よりも冷たく、確かな感触を持っている。
出先で急に雨が降り出した雨に焦ることもしばしばだが、特に降り始めは「雨」という共通の話題を与えてくれる。
雨の匂い、土と埃のような香り。
雨の降り始め、土と埃の混ざったようなにおいがすることがある。
それは都会の匂いを、あるいは森の匂いを凝縮したような香りで、なんとも形容し難いのだが、雨の到来を伝えてくれる匂いである。
私はこの匂いを嗅ぐと、少し落ち着いた気分になれる。
雨の味、少し変わった味。
小さい頃、雨を口に入れるのが好きだった。
汚いからやめなさい、としばしば止められたのもよい思い出だ。
都会の雨は少し埃っぽい味がした。
田舎の雨は少し土のような甘い味がした。
水道水とも、市販の天然水とも違う、不思議な味がした。
私は雨が好きだ。
一方で、梅雨が明けて欲しいとも思う。
そして、水害は起きないで欲しいと思う。
私は我儘だ。
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