あの子の結婚式

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「帰る時、連絡するね」  私は車を降り際に修二に声を掛けた。 「二次会も行くんなら夜遅いがやろ? 夜中は起きとるから必要なら電話して」 「うん」 「どっかの男とアバンチュールならそれはそれで」 「バッカじゃないの」  私は少し乱暴に車のドアを閉めた。ガラスの向こうで修二が笑っている。きっと品のないガハハ声で。昔は、かわいい笑顔だったのに。  修二の車が去っていくとほぼ同時に後ろから声を掛けられた。 「美咲」  名前を呼ばれて振り返ると、そこにいたのは赤いドレスを身に纏った真澄ちゃんだった。 「おー、真澄ちゃん」 「久しぶりー、何年振りー?」  高校を卒業して三回めの夏以来だとは知っているが、 「いつ以来だろうね、本当、久しぶり」  と私は笑顔で応えた。 「美咲、全然帰ってこんがやもん。同窓会出たことないでしょ?」 「卒業して最初のは行ったよ」 「それハタチより前だよ、いつの話してんの」 「そんな前だっけ」 「ところで今、美咲を送ってきたのって旦那?」 「まさか。あれは弟の車だよ」 「修二くん? 昔は中学生だったのにねー」  誰だって昔は中学生だよ、と笑いながら胸の奥では別のことを考える。  真澄ちゃんはいくつになっても、人の恋愛事情が気になるのだなぁと。  同じようなことを高校生の時も行っていた。たまたま駅で会った中学の同級生男子と話していただけなのに、 「あれは誰なん? 新しい彼氏?」  と自分のことのように盛り上がる。盛り上がりは際限なく続く。  正直、少し疲れる。
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