イドマとの昔話

10/10
84人が本棚に入れています
本棚に追加
/221ページ
『僕は結婚するかは、わからない。 けど、父になるなら…イドマさんを、理想にしたいと思う。だから、僕の父さんに、なってもらえないで、しょうか!?』  心臓が走っているときのように鼓動を上げていた。胸の内にある思いを吐き出すのは、どうしてこうも大変なのだろうと思う。  イドマは…困った顔をしていた。 「俺は君が思っているような人間ではない。臆病な卑怯者だし、部下も大勢死なせている。それに、家庭すら持ったことが無い」  イドマはそんな人ではない。僕はその言葉を飲み込んだ。イドマ自身にしかわからないことだってたくさんある。それに、考えようによっては、そんな弱さを心の内側に抱えながら、よき上司として、よき冒険者として僕らをリードし続けてくれたのだとしたら、それは凄く、人間として強いことなのではなかろうか。  僕が真剣に見ていると、イドマは目を閉じ、やがて言った。 「…少し考えさせてくれ」
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!