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 練習場の前に部員たちが集合し整列した。皆、カラフルなポロシャツとパンツ姿で、手には大きめの水筒を携えている。色とりどりで学校でのジャージ姿とは違うから自然と気分も踊る。やはりコーディネートは個性が滲み出るのだろう、女子部員はピンクやパステルイエローといった明るい生地に可愛い柄の入ったポロシャツが多く見受けられた。氷室先輩は無地の白いポロシャツに水色のパンツで清潔感があるけれど、洒落っけは少々控えめだ。色恋沙汰に無縁そうな人のチョイスに思える。  そう思うと同時に以前、氷室先輩が口にした「昔好きな人がいた」という事実が妙に心の中でくすぶっていることに気づいた。ゴルフに夢中としか思えないけれど、そんな氷室先輩の気持ちを動かすなんて、いったいどんな人なのだろうか? 「昔」ということは、今その人は目の前にいないのだろう。  総勢20名の部員が並んで挨拶をする。杉田先輩の右隣には品格のある初老の男性がいらして、まずはその方にご挨拶をいただくようだ。左隣の東雲監督とはだいぶ雰囲気が違っていた。 「皆様、おはようございます、このゴルフ場の支配人の山崎です。夏季合宿ということで東雲監督から伺っております。将来、プロゴルファーを目指す方も、そうでない方も、このゴルフ場で是非、腕を磨いて、充実した時間を過ごしてください。  もし何か困ったことがありましたら、フロントに申し出てください。それではよろしくお願いします」  声を揃えて一同、「よろしくお願いします」と返事をすると、監督はそれに乗じて「まあ、よろしくな」と付け足しただけで挨拶を済ませた。本当に紳士のスポーツの監督なのか疑問符が浮かんだが立場上、黙認することにした。次に杉田先輩が挨拶する。 「では今日から合宿を始めます。過酷な炎天下になるので水分をよく摂って熱中症にならないように。それから怪我のないよう、よく気をつけるように。特にスイングの際は周りを確認すること、いいな」 「「「はいっ!!」」」
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