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2  関東平野に広がる水郷、霞ケ浦を望む高台に高校の校舎は佇んでいる。天空がすべて見渡せるくらいの広大なグラウンドを、風が自由気ままにに抜けてゆく。閉塞感がなくて心地よい。陸上や球技の部活動に所属する部員たちは場所に不自由することなく練習ができ、しかもスポーツに力を入れている高校だけあって設備も十分に整っていた。  校舎の南側にはサッカーゴール、テニスコート、陸上競技のトラックがひろがる。校舎の裏手に回り込むと、深緑色のネットで囲まれたゴルフのショット練習用の打席が十列あり、またパッティング練習用のグリーンとそれを囲むバンカーもある。敷かれた芝生の上でアプローチショットの練習もできるのだ。  と、部活案内のパンフレットに書かれていた。それを見た僕は高校でゴルフの設備を持っていることに少なからず驚いたものだ。  はじめての挨拶なのに遅くなると心証悪いと思い、早めに到着したつもりだったが、どうやら早すぎたようで人の気配に乏しかった。僕の耳に球を弾く乾いた音が届いたのが、誰かがいるというたったひとつの証拠だった。  その音源を辿り、校舎の裏側に回り込むと、パンフレットの写真で見た練習場のネットとグリーン、そしてバンカーが視界に飛び込んできた。  けれども写真と違っていたことは、たった一人、ショットの練習をしている女子の姿があったことだった。紺色のジャージに身を包んだ、小柄でいくぶんぽっちゃりとした女子が、銀色に鈍く光るアイアンを手にして、ひゅんひゅんと風を切るようにスイングをしていた。被ったサンバイザーの上からは艶のあるポニーテールが覗き、それは桃色のリボンで飾られていた。白いゴルフボールを芝生を模したマットの上にそっと置き、静かに構える。  小さく息を吐いたのが遠くからでも感じ取れた。ゆったりと振り上げたゴルフクラブが天を指し、そのたゆたうようなリズムに一瞬、時が止まったような気がした。
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