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まるでスローモーションのように、静止していたクラブが振り下ろされてくる。その孤はよどみなく、何の迷いもなかった。クラブヘッドが最下点を迎えた瞬間、カツーンと澄んだ音が辺りに散った。音は波紋のように空中に広がり、辺りの空気を支配する。
スイングのフィニッシュでクラブが背中に収まると、勢いでポニーテールがやわらかく舞った。
――彼女も、新入生だろうか。
そう思わせるに十分なほど初々しく、それでいて張りつめる緊張感があった。スポーツコースは全部で3クラスあるから、他のクラスの子なのだろうと僕は察した。
乾いた音が規則的に生み出されている間、僕はその女子のスイングを遠目に眺めていた。一打一打、バケツの中に溜め込まれているゴルフボールを手繰り寄せ、マットの上にセットしてゆく。
僕は固唾を飲んで見守る。無駄な力感はどこにもなく、自然の摂理を手懐けて生み出す、寸分の狂いもないスイングのように思えた。そしてポニーテールの揺れ具合すら毎回ほぼ同じで、まるでビデオテープを何度も巻き戻し、一定の速度で繰り返し再生しているようにも感じられた。
高いスイングの再現性もさることながら、打ち出す球の高さが揃っていて、ネットに当たる場所も毎回ほぼ一緒なのが見事だった。
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