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冬の夜空に消えないように
「っ、げほっ」
洗面台に、赤い液体が落ちる。
「⋯⋯はあ」
またか、とうんざりしつつ、水を出して血を流す。
理解しているし、信じている。
なのに、毎年悪夢を見る。
そんなことありえない。どれだけ言い聞かせても、体が納得しないようだ。
眠らなくていい。だから、とにかく横になろう。
寝室まで戻ろうとしていた。
「姉さん」
声が聞こえる。
「姉さん、大丈夫?」
「⋯⋯高尾」
私は、高尾に抱えられながら目を覚ました。酷い目眩と頭痛がする。体が冷たい。
まだ外は暗い。
「こんな所で寝たら風邪ひいちゃうでしょ、一月なんだから」
キョロキョロと周りを見ると、そこは廊下だった。
寝室に行く前に倒れたのだろう。
「⋯⋯ごめん」
「いいんだよ」
高尾は優しく微笑んだ。
つい、抑えていた涙がこぼれ落ちた。
「ごめ、んっ⋯⋯」
「あはは。もう、仕方がないなー姉さんは」
温かい手が、雫を拭う。
「怖い夢見たんでしょ?仕方ないから一緒に寝てあげる」
「うん⋯⋯っ」
今日ばかりは、ずっとそばにいてほしい。
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