冬の夜空に消えないように

1/1
前へ
/1ページ
次へ

冬の夜空に消えないように

「っ、げほっ」 洗面台に、赤い液体が落ちる。 「⋯⋯はあ」 またか、とうんざりしつつ、水を出して血を流す。 理解しているし、信じている。 なのに、毎年悪夢を見る。 そんなことありえない。どれだけ言い聞かせても、体が納得しないようだ。 眠らなくていい。だから、とにかく横になろう。 寝室まで戻ろうとしていた。 「姉さん」 声が聞こえる。 「姉さん、大丈夫?」 「⋯⋯高尾」 私は、高尾に抱えられながら目を覚ました。酷い目眩と頭痛がする。体が冷たい。 まだ外は暗い。 「こんな所で寝たら風邪ひいちゃうでしょ、一月なんだから」 キョロキョロと周りを見ると、そこは廊下だった。 寝室に行く前に倒れたのだろう。 「⋯⋯ごめん」 「いいんだよ」 高尾は優しく微笑んだ。 つい、抑えていた涙がこぼれ落ちた。 「ごめ、んっ⋯⋯」 「あはは。もう、仕方がないなー姉さんは」 温かい手が、雫を拭う。 「怖い夢見たんでしょ?仕方ないから一緒に寝てあげる」 「うん⋯⋯っ」 今日ばかりは、ずっとそばにいてほしい。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加