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智哉は落ち込んでばかりはいられないと思った。そうして居てもたってもいられなくなったが、まさか純一君の死体を見に行くわけにもいかない。それにまだ、明人君の小説も続きを読んでいないのだ。智哉は重い気分のため仕事が捗らないのを誰でもない自分で言い聞かせ、それを理由にして、明人君の小夜子ちゃんがヒロインで出てくるという恋愛小説の続きを読んだ。
筆者は学校で一番美人だというべき才女と付き合っていた。高校生までいじめられていたから女の子と付き合うのは初めてだった。筆者は背が高く、柔道を高校生から続けているので体格も良かった。ハーフに間違われる均整な顔立ちは、すれ違う人を振り返らせるほどの容姿でいて正直、女の子にはモテた。そんな筆者と彼女はお似合いで美男美女カップルだった。彼女は大学が主催する美人コンテストで1位になるほどの美貌の持ち主だった。少し垂れた大きな目に、外人のような高い鼻、控えめにピンクのリップグロスを塗った艶々の唇。この子がまさか僕の彼女になってくれているなんてと思うと天にも昇りる気持ちだった。
夏に付き合い始めたのでデートは夏祭りに行ったり、2人で各地の花火大会を見たりする。大江戸花火大会に行った時は少しはやく切り上げて夜景の見えるレストランで食事をしながら、少し小さく見える夜空の花火を楽しんだ。彼女は食前酒で酔って少し顔を赤くする。
「凄く綺麗。2人でこんな景色が見れるなんて付き合って良かった」
目を潤ませて言った顔が魅力的で筆者はますます彼女のとりこになった。筆者は人目もはばからず彼女の肩を抱いた。ピンクの可愛い唇にキスがしたくなった。
夏祭りには彼女は白の生地に赤い椿の柄が染めてある浴衣を着て来た。いつもピンクのリップグロスを塗っているのに赤い口紅をつけて来たのにはドキドキした。アップにした髪は編み込まれていて真っ白いうなじが色気をぷんぷん漂わせた。
そんな楽し時間も長くは続かなかった。筆者は焼肉レストランでアルバイトをしていたのでデート代はおもに自分が持った。だが、大学生の時給ではたかが知れている。そんなに贅沢をさせてあげられることも出来なく、だんだん外出も少なくなり、筆者の家で一緒にゲームをしたり、本を読んだりして過ごす事も多くなった。彼女はそれが不服だったようで、つまらなそうな顔をしてお洒落をすることも少なくなった。
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