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「これから主人と身元確認に行きますが、たぶん純一だと思います。いや確信しています。主人も言ってるんですが状況が物語ってるんです。でもどうして自殺なんか。井川さんは何か解りますか?最後に普通の純一に会ったのは井川さんなんですよ」
そう言うと母親は嗚咽した。智哉はしどろもどろに言った。
「あ、あの、その事は後でゆっくり説明します。し、信じてもらえないかもしれませんが純一君と行った自殺マンションのまつわる話が投稿されている小説投稿サイトがありますので、それを読めば粗方は俺と知り合ったいきさつが解るでしょう。で、でも俺も詳しい事、なぜ自殺が多いマンションで不思議な事が起こるのかは解っていないんです」
「そうですか。では後で教えてください。取り合えずこれで失礼します。忙しいのですみません」
「ええ、俺に出来る事があれば言ってください」
電話を切って、デスクの椅子に座る。ブラックのアイスコーヒーがペットボトルで買ってあったので、それをゴクゴクと飲んだ。良太が難しい顔をして智哉の隣に座った。
「なにかあったのか?」
「ああ、純一君、死んだらしい。飛び降りというか首つりで」
「どういう事なんだ?」
「自殺マンションの最上階の廊下にある金属製の手すりに縄を縛って結わえ付けておいてから、片一方の端に自分の首を縛ってい勢いよく飛び降りたんだろう。首は胴体から引きちぎれ、道に白髪頭の純一君の頭が転がってたんだと、こういう話だ」
良太は顔面蒼白になった。
「そ、それは大変だな。だがそれくらいで首がちぎれるか?まるで誰かに下から引っ張られたみたいだな」
「不吉なことを言うなよ。小夜子ちゃんを思い出すじゃないか」
智哉は小夜子ちゃんの名前をだしてゾッとした。
「智哉は行くのか?」
「ああ、後でな。先にお守りを届ければよかったな」
「責任を感じるんじゃない。先にこの話を持ち込んだのは純一君だろう」
「うん、だけど、傍観し過ぎていた。昨日もキャバクラに行ったりなんかして」
智哉は頭を抱えると嗚咽した。それからハッと起き上がってアイスコーヒーが半分以上も残っているペットボトルを握りつぶすようにした。
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