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そんな折だ。銀杏の葉が黄色に染まり、公園に黄色の絨毯をつくる秋になった時、筆者と公園のベンチでこれからの2人について話し合おうと言い始めた。
「はー。家の外っていいね。これからのこと話し合うのに丁度いい」
彼女はため息混じりに言った。筆者はその横顔を見る。髪が風でサラサラなびいていて白い肌にかかっていた。綺麗だなと思った。だが彼女の物の含んだ言い方に不安になる。
「それってどういう事、僕んちで逢うのが嫌だったの?」
「そんなことないけど、何時も、何時もだと鬱々としちゃう」
「そうか、じゃ、これからはこうして公園で逢うのもいいな。涼しくなってきたし」
「ね、公園なんかじゃなくてもっと派手なとこ行きたい。例えばクラブとか」
筆者は戸惑った。クラブは筆者は行った事がないが派手なDJが居て音楽をガンガンとかけ、お酒を飲みながら踊ったり騒いだりする場所だという事くらいは知っている。真面目な筆者には興味がないし、彼女を連れて行きたいだなんて思わない。筆者は頭をブンブンと振った。
「そんなところ行きたくないよ。それに危険じゃないか」
「ふーん、つまらない」
彼女はそう言うとベンチを立ってスタスタと歩きだした。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
「ねえ、わたしたち、性格が合わないのかも知れないね」
彼女は筆者の手を振り払って駆けて去って行った。別れの予感が心の底から湧き上がってきた。
智哉は小説を読むのを止めてペットボトルに入っていたアイスコーヒーを一気に飲んだ。これを書いた、小説に、明人君に感情移入してしまった。職業柄、小説は読みなれているはずなのに。智哉は3話、4話と読み進めたくなった。まだ小夜子ちゃんも登場していない。だがしかし仕事がある。仕方なくホラーのジャンルをチェックした。一応自殺マンションで検索をかける。純一君の事があった後に自殺マンションの小説を読むのは気がひけるがこれも仕事のうちだ。すると『生首のある自殺マンション』という題名が目に飛び込んできた。生首、もう事件が噂になってるのか。智哉は身体に戦慄が走った。
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