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 智哉は小説を読み終えた。こんな小説が世間に溢れ、何も知らない無邪気な読者に読めれていると思うとゾッとした。内容が内容だけに過激表現の設定がなされていて、R18指定になっているが、通勤の電車の中や、会社のお昼休みにこれが読まれていると考えると震えがおきた。パソコンを茫然と見ていると良太がポンッと手を叩いた。 「やっぱり、沢田小夜子はホラーのジャンルのものと、恋愛のジャンルに出てくるAKIRA、井上明人君が書く沢田小夜子と同一人物なのかもしれないな」 智哉は中腰になって良太の顔を見た。 「解ったのか?」 「ああ、少しな。俺もホラーのジャンルを読んでみたんだよ。名前も容姿も年齢もピッタリだ」 「明人君が図って書いたのかもしれないぞ」 「いや、図って書けばこんな恋愛小説にならん」 良太は自信ありげに頷いてから、「ま、智哉も読んでみろよ」と言った。それを聞いていた香苗ちゃんがイライラとした様子で言う。 「もう、この前からエラー続出で忙しいんですよ。2人とも仕事してください」 良太はふざけた調子で、「解った。解った、仕事しようぜ」と言った。
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