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「あっ、ただいま、ミーコ」
「フゥー」
飼っていた猫のミーコだ。何時もは嬉しそうにすり寄って来るのに今日は逆毛をたてて鳴く。
「どうしたんだ、ミーコ。俺だよ、俺」
「フゥー」
ミーコは耳を後ろ向きにたてて牙を見せて威嚇してくる。そのまま暫く鳴いていたが少しすると諦めたように何時も寝ている和室に入っていった。
「なんだか嫌だ。智哉さんったらホラーの小説ばかり読んでるから変なもの連れてきちゃったんじゃない?」
華絵はそう言うとブルっと動いてから、また身体を両腕で包み込んだ。
「気のせいだよ。ミーコはご機嫌斜めなんだろう」
「そうかな。いままでこんな事は無かったじゃない」
智哉は渋い顔をしてブラウスのボタンを外す。華絵が部屋着であるTシャツを甲斐甲斐しく持って着替えるのを待ってくれた。
「夕飯は出来てるの?」
「夕飯がいい?それともお風呂にする?お風呂だったら久しぶりに一緒に入らない?」
華絵は上目遣いで照れ臭そうにそう言った。智哉はえっと思って聞き返す。結婚した当初はよく一緒にお風呂に入っていたが、娘が産まれてからは一緒に入った記憶がない。
「何だか、怖いんだもの。電話の事とか、ミーコの事とか。3人で、ダメかな?」
「ああ、たまには家族全員で入るのもいいかもな」
智哉は頷いてからそう言った。
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