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「純一君がこの前ここに来た後、子供出来たかなって気になって後をついて行ったの。そしたらお兄さんが純一君のところに来たでしょ。あっ、彼氏にそっくりって思ったの。それからずっとお兄さんの周りウロウロしてたんだよ」
えっ、
「ずっとね。お兄さんエレベーターでわたしの赤いスカート挟んだでしょ。痛かった。でも許してあげる。彼氏に似ているんだもの。お兄さんの名前教えてよ」
「俺は智哉だよ」
「そう、智哉さんって呼んでいい?もう他人ではないんだものね」
ケタケタケタケタ。
女の子は口だけで笑う。目が白目になって、黒い髪がスルスル伸びて智哉の足に絡まる。
うわあ何だ?ということはやっぱり幽霊か。まさか、やっちまったよ。智哉はまたジリジリと後ろに下がった。髪のせいで上手く後退り出来ない。
「ふふふ、お兄さんは許してあげる」
髪がスルスルと足から離れた。
「最近、何か不思議な事起こらなかった?」
そうか。だから事故とか、動物に吠えられたりしたんだな。智哉は悪寒がして足が竦んだ。
「お兄さんはまた来るよね。だってわたし、赤ちゃんが出来たんだもの」
小夜子ちゃんはそう言うとまたケタケタケタと笑い。白目を剥いてマンションの廊下の手すりに背中でもたれ、もう一度ケタケタと笑った。その後つま先立ちになり、こちらを向いたまま飛び上がって頭から下に落ちていった。
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