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キャバクラは延長しないで帰った。いくら泊まりだと言っても今日は月曜日、明日は仕事である。それに、純一君の事もあるし、井上明人の小説の続きも読まねばならない。ビジネスホテルはシングル2つをあらかじめ予約しておいた。良太は隣の部屋だった。
「大丈夫か?1人で眠れるか?」
良太は半分ふざけたように言った。智哉はカチンときた。
「ああ、俺だって子供じゃない」
「それなら良かった。いいか、俺は心配してるんだぞ」
「わかってるよ」
「明日、一緒に井上明人の小説を読もう。実は俺もまだ全部読んでいない。だが嫌な予感がするんだよ」
良太はそう言ってドアを閉めた。智哉は足元から悪寒が身体を登って全身に伝わった。
次の日は頭の痛みで目が覚めた。完全なる二日酔いである。昨日着ていたポロシャツをまた着ると少し汗臭かった。着替えくらい買ってから飲みにでれば良かったと後悔する。枕元の置いてあったスマートフォンを見ると、華絵からメールが来ていた。急いでそれを読む。智哉の身体と天気を心配するメールだった。キャバクラに行った事もお見通しだったようで、女の子と飲み過ぎなかったかな?と書いてあった。流石、俺の奥さんだ感が良い。智哉は失笑してビジネスホテルの部屋を出た。それから良太と2人、タクシーで会社へ向かった。
会社に着くと、事務の香苗ちゃんが、
「あ、2人仲良く、出勤」
と言ってふざける。良太は「ハハハ、いいだろー」と言って、智哉と肩を組んだ。
「どこがいいんだよ。男同士で」
智哉もふざけて良太の腕を振り払った。
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