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 会社から自宅までは車で2時間かかる。都心に家を構えないで郊外の埼玉県に中古の安い一軒家を買ったのだ。車にお金をかけているので、都内に家は構えられなかったのである。妻の華絵も別段文句は無かったようだ。逆にペットに猫が飼える事を喜んでいた。  車は首都高から関越自動車道に乗ってグングン進む。 あれっ。  またパトカーの赤色灯が前方に見えた。偶然だな。また事故か。智哉はペシャンコになった2台の乗用車の横を通り過ぎた。今回の事故も救急車が走り去った後のようだ。居合わせなくて良かった。智哉は少しホッとする。  家に帰り玄関のドアを開けると、妻の華絵が狼狽を隠しきれない様子で玄関まで駆けつけて来た。 「変な電話が沢山あるの」 「何だって?変な電話?」 「うん、若い女の子の声でね、最初は智哉さんいますかって言ってただけなんだけど・・・」 「他にも何か言われたのか?」 智哉は昼間の会社にかかってきた電話の事を思い出した。まさか同じ犯人? 「智哉さんと付き合わせてくださいって。そう言って笑うの。何度も何度もかかってきてね。わたし怒る気持ちより薄気味悪くなっちゃた」 そう言って華絵は自分の身体を両腕で包み込んだ。智哉は「それは気味悪いな」と言ってからスリッパを履いて玄関にあがる。ふいに細く開いた扉から茶色いものが現れた。
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