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 会社は9時からなので7時前には家を出なくてはならない。智哉はネクタイを締めないで家を出た。会社に着くと良太が交通事故をおこしてしまったんだと落ち込んでいた。良太も車通勤の人間だ。智哉は埼玉県だが良太は神奈川県に住んでいる。独身だが、車を持つと都内にはなかなか住むことは難しい。 「参ったよ、赤いスカートの女の子が飛び出してきたんだ」 「えっ、それで轢いちゃったのか?」 「いやー。目の錯覚だったみたいでさ、反対車線の車にぶつかった時には誰もいなかったよ」 「赤いスカート、それは気になるな」 「なんで、そこが気になるんだ?」 良太は灰色のデスクの上に両手をついた姿勢で身を乗り出して聞いてきた。 「いや、この前、インタビューに行った、純一君も自殺マンションで赤いスカートの女の子を見たって言ってたからさ。それに真夏の白昼夢だと思うんだが俺も赤いスカートの子に会っているんだ」 「でも、男の子が見たのはマンションの最上階でだろ。皆が投稿してくる内容はそうじゃないか。俺が見たのは国道だよ。お前はどこで夢を見たんだ?」 「俺は純一君の家があるマンションだよ」 「そうか。それはただの気のせいだと思うがな。俺が見たのは神奈川の県道だよ。マンションではない」 「うーん。そうだな。偶然の一致か」  智哉はパソコンの電源をいれた。外国の綺麗な景色がデスクトップを飾る。アプリをダブルクリックして、昨日の夕方から今日の朝まで投稿されたホラー小説をチェックする。冬に比べると今の暑い季節はホラーの投稿が多い。人間はどうして夏に怖い話をしたがるのだろう。お盆が関係しているからか。
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