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後日、この日のことを養父がうっかり口を滑らせてくれた。
実は、僕が無事に土地神の元までたどり着けるか心配で着いてきていたらしい。お巡りさんがあの時追って来なかったのも、「私がうっかり目を離しまして……」と言い訳をしてくれたからなんだと。そんな言い訳をして、よく誘拐犯だと疑われなかったな、と思う。
僕が全力疾走した後、また迷っていた僕を見つけて、正しい道を教えようと近づいた……けど僕が再び歩き始める姿を見て、やっぱり止めたらしい。
「背中が頼もしそうに見えたから」って言ってたけど、そんな筈ない。絶対ない。
だって、麦わら帽子被って、キャラクターが印刷されたTシャツと無地の短パンに身を包んだ、いかにも「小学生」な僕の背中に、一体どんな奴が頼もしさなんか感じるんだ?
というか、僕はその時ランドセルを背負ってたんだから、背中なんて見える筈もない。
そう言ったら「バレたか」なんて言いやがったから、拳を養父の腹に叩き込んでやった。……と思ったら、キレイに受け止められていた。
「小さな手だな」
なんて言って笑っていたから、反対の手でビンタしてやった。今度は見事に決まって、養父のほっぺたには小さな紅葉ができていた。
(……そもそも、心配して付いてくるくらいだったら、はじめから案内してくれれば良かったんじゃ……っていうのは、あとから気が付いた。)
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