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「三崎さん」
十分に時間を見はからった後、僕は声を出した。三崎さんの腕が緩む。
「ああ、ごめんね。痛かったかな、つい」
「いえ」
僕は優しく笑った。
「僕、下手でごめんなさい」
「いいんだ。そんなことは」
三崎さんがむきになって言った。
「君にそのケがないことは、一目見た時から分かってた。同じ匂いがすればすぐ分かるからね。でも、僕は」
「わかってます。それ以上は言わないでください。僕も苦しくなるんです」
「すまないね、君を休ませてあげたいのに、かえって困らせるようなことを言って。気を悪くしないで」
「そんなこと、ありませんよ。僕は三崎さん、好きです」
「でも、そういう意味ではないんだよね」
「ごめんなさい」
こういう瞬間が、僕にはとても切ない。
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