三崎さん

（４）

　その夜は、三崎さんとおしゃべりをして、とはいっても一方的に僕が最近の生活の中であったたわいもないことを話して聞かせて、穏やかに過ぎていった。時間が来ると、僕はホテルの部屋を出て、三崎さんを残して家に帰った。

　こういうことが、ここ数カ月続いている。

　僕は男娼だ。それも、男性相手の男娼だ。

　この仕事に慣れるのは大変だった。
　最初はやっぱり気持ち悪くて、引きつっているのが自分で分かるくらいだった。うまくふるまおうとすればするほど、僕は器用じゃないということが、痛いほどよく分かった。でも、お客さんは総じて優しくて、そんな僕を暖かく見守ってくれた。

　三崎さんに会ったのは、気持ちの面でようやく余裕と開き直りが出てきたころ。

　それはほかのお客さんにはない苦労を僕にもたらした。

　なぜなら、初めて会ったその日に、彼は僕に恋をしてしまったらしいから。