エッセー コンテストの審査のこと

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 その時、僕、ハッキリ気がついた。  ずっと彩月の手の上だった。  僕がクラス委員になれるように、自分が悪役を演じてくれたんだ。  クラスメイトを脅迫する彩月のこと、僕が体を張って止める。  そうすれば僕が、クラスのヒーローになれるって信じて・・・  独白のシーンは五百字くらい書いています。  今まで彩月のことを、不良の幼馴染だと敬遠していた主人公の考えが百八十度変わる重要なシーンです。  付け加えると、  「彩月は不良と思われてるけど、暴力をふるう相手というのは、いじめや差別をする生徒に対してだ」 と示唆するシーンも、何シーンかありました。  要するに、  「ヒロインの相羽彩月が主人公をヒーローにするため、わざと脅迫的言動でクラスメイトを震え上がらせていた」 ことが分かる重要なシーンを読んでいない。  小説上のクライマックスなのに・・・  おまけにしつこくも  <この部分は、私たちも協力して大幅な書き換えが必要だと思われるので、見積額としては多少高くなります> と憎々しい文章が記してありました。  僕は「独白シーン」のコピーをとったうえで、  <ヒロインの行動に対しては、自分はきちんと分量をとって説明している。  御社より、『ある』ものを『ない』と言いがかりをつけられても、こちらとしては対応でき兼ねる。  鑑みるに、御社は殆ど自分の作品に興味がなく、クライマックスもきちんと読んでおられないようだ。  自分は一会社員に過ぎないので、御社が興味のない作品を、金を払ってまで出版する必要はないかと確信する。  見積書の送付は全く無用です>  そう返信用の書類に記入し、返信用の封筒に「共同出版の案内」のパンフレットも講評も押し込みました。  そして賞金が送られてきてから返信しました。      
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