68人が本棚に入れています
本棚に追加
エッセー 地方自治体主催の文学賞のこと②
授賞式当日は特急で三時間かけ、現地に着きました。
町役場の人の自動車で案内されて、小説に描いた竜神の伝説の池に行きました。
「ここが倉橋さんの小説にも出てくる竜神の池です」
「ええーっ」
想像以上に小さな池でした。竜神の伝説とどうしても結びつきませんでした。
僕の小説では、おどろおどろしい魔の池のように描かれています。
町役場の人は、
(倉橋は、間違いなく一度もこの町に来ていない。想像で好き勝手なこと書いている)
と間違いなく思ったでしょう。
その通りなのです。
パンフレットの写真と説明文しか知りません。
午後。町役場で盛大に行われた授賞式。長編部門、短編部門で大賞、優秀賞を獲得した人達が口々、
「小説の構想のため、二回にわたってA町にまいりました」
「取材のため、A町に来ました。自然や地域の人々と触れ合った貴重な経験でした」
と挨拶するのを聞き、全身フリーズ状態になりました。
まさしく佳作にふさわしい執筆態度でした。
どうしてこういう人間が書いた作品が入賞したのでしょうか?
最初のコメントを投稿しよう!